漢方処方で改善を目指す場合

まずはじめに押さえておきたいことがあります。

「胃がん」の特殊性についてです。

胃がんとピロリ菌は密接に関係していることが明らかになっております。
1994年にWHO(世界保健機構)は、ピロリ菌は「確実な発がん因子」と認定しました。
これは、タバコやアスベストと同じ分類に入ります。

ピロリ菌の感染が長期間にわたって持続すると、胃の粘膜がうすくやせてしまう「萎縮」が進行し、一部は腸上皮化生となり、胃がんを引き起こしやすい状態をつくりだします。また、胃潰瘍、十二指腸潰瘍や胃炎などの患者さんを対象とした調査では、10年間で胃がんになった人の割合は、ピロリ菌に感染していない人では0%(280人中0人)、ピロリ菌に感染している人では2.9%(1246人中36人)であったとの報告がわが国から行われています。

現在、保険適用でピロリ菌の検査・除菌療法を行うことができる疾患は決められています。つまり胃がんは予防対策のできる(ピロリ菌の除菌)がんということです。このサイトをご覧の方はすでに「胃がん」と診断されている方が大半だと思います。

実はピロリ菌の除菌は、早期胃がんの方にも有効であることが分かっております。ピロリ菌を除菌すると、新しい胃がんが発生する確率を減らすことができる可能性があります。早期胃がんの治療後にピロリ菌を除菌した患者さんは、除菌をしなかった患者さんと比べ、3年以内に新しい胃がんが発生した人が約3分の1だったと報告されています。

漢方処方を考える上で、この特殊性(ピロリ菌が胃がんのリスク)を除けば、基本的には他のがんと同じ考え方でいいと思います。以降は一般的ながん対策の解説をしたいと思います。漢方薬の中にも、がん細胞の増殖を抑える制がん作用を持つものがあることが確かめられていますが、やはり直接的にがん細胞を破壊・殺傷する効果は、西洋医学の抗がん剤の方が強いとされています。

ただし、漢方薬を化学療法や放射線療法に併用すると、制がん効果(癌細胞を破壊したり増殖を抑える効果)が強められるとともに、副作用が軽減されることが明らかにされています。西洋医学のがん治療に併用する漢方薬は、十全大補湯、補中益気湯などの『補剤』が主体で、種々の副作用を軽減して、痛みも和らげます。

これらの処方に配合されている人参(薬用)は、免疫力を高め、抗がん剤や放射線療法による白血球異常そのほかの副作用を抑えることが科学的に確かめられています。また、十全大補湯、補中益気湯には食欲の改善効果もあります。食欲改善は進行がんなどの患者を延命させるポイントのひとつで、『漢方薬併用で食欲改善・延命効果が認められた』という報告が多数みられます。

いずれにせよ、がんを克服するには『免疫』が大切です。くりかえしますが、私は西洋医学を否定しているのではありません。正しい西洋医学の診断を受けられ、治療をされた上、それを補完する治療として漢方薬を考えていただきたいのです。